インターンシップを考える
投稿日時:2018/05/22
カウコレ(インターン生の同窓会2018)
売り手市場が加速し採用難が年々深刻化する中、学生との接点としてインターンシップに取り組む企業が増えています。中には「インターンシップの目的は採用」と言い切る企業もいます。その中で増えているのが「1dayインターンシップ(以下、1day)」です。「企業にとっても学生にとっても負担が少ない」という耳ざわりの良い言葉で語られるこの1dayですが、その裏には多くの問題を孕んでいます。
▼インターンシップの起源
そもそもインターンシップとは、1906年にアメリカで始まった「学生のための職業体験」が起源とされます。社会に出る前の若者に職業体験の機会を提供して、スキルアップや職業観醸成を助けるというのが当初の目的でした。つまり本来インターンシップは、学生が主役であり、社会が手を差し伸べるという公益的な取り組みだったのです。ところが最近の1dayに代表されるような採用目的のインターンシップには「学生が主役」という認識は薄く、企業都合が色濃く出ています。若者を大人たちがなりふり構わず囲い込もうとしている構図です。
▼ 1day、それぞれの思惑
1dayで学生が得るものは何でしょう?わずか1日でスキルアップや職業観醸成は望めません。しかし、それでも参加する学生が一定数いるのはなぜか?驚くことに、実は学生も「企業の思惑」を理解して1dayに臨むといいます。つまり、就職活動の解禁前に企業と接触できる非公式なチャネルだと。つまり双方が本音を隠し合いながら「狸と狐の騙し合い」をしているのです。こうした学生の心情について、九州産業大学の聞間教授は「下心には下心で返す」と語ります。つまり、企業が「自社さえよければ」と接触すると、学生も「自分さえよければ」と駆け引きする。倫理観や誠実さとはかけ離れた利己主義の応酬です。そしてこれは学生の倫理観なき内定辞退が増えるの1つの遠因にもなっているのです。
▼学生主役のインターンシップ
一方で、そんな中でも「学生主役のインターンシップ」を実施している企業もあります。東京・上野のシステム会社「エム・ソフト」では、北海道や沖縄など遠方からもインターン生を受け入れ、なんとその交通費や宿泊費までも負担しています。あくまでも主役は学生と置きつつ、インターンシップを通じて自社を知ってもらう機会だと捉えているそうです。その取り組みは20年間以上。その結果、「エム・ソフトにお世話になった」「社員さんに憧れた」と毎年のように学生が入社を希望してくると言います。先述の例とは対称的に、企業と学生が誠実な関係を構築しているのです。
▼世界的メーカーに学ぶ
もう一つ、インターンシップではありませんが世界的企業の興味深い例を示します。衣料品メーカーの「パタゴニア」は「フェアトレード宣言」をしています。製造を委託する途上国のワーカーに公正な賃金を支払いますと約束しているのです。同社は「なぜフェアトレードか?」と題したコラムの中でその理由を以下のように述べています。
「それは私たちの製品を作る労働者たちを支えるから。サーフィン用の衣料用品の業界は舞台裏の話をしたがりません。その理由は単純です。ビジネスは労働者や地域の福祉よりも、自己の利益を優先することが多いからです。けれども、フェアトレードを選ぶことで、私たちはより良い変化をもたらすことに貢献でき、さらにパタゴニアの製品を作る人たちが確実に当然の敬意を持って扱われます。」(パタゴニア社ウェブサイトより)
つまり、フェアトレードをすることが社員やスタッフを守ることにつながると言い切っているのです。私はこの考えに共感します。

パタゴニア社のフェアトレードのポスター
▼最後に
かの二宮尊徳が「遠くをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」と言いました。目先の利益ばかりを追求するのではなく、いかに中長期的かつ広範な幸福づくりに目を向けるか。それはインターンシップでも同じではないでしょうか。私たち自身も社会に貢献するインターンシップを追求していきます。カウテレビジョンでは、過去14年間で290名を超えるインターン生を送り出して来ました。その知見を「福岡はたらくTV」に込めて地元の企業の皆様と「学生が主役の職業観醸成インターンシップ」を推進しています。
間もなく夏のインターンシップ募集がスタートします。当コラムが皆様にとってインターンを考えるきっかけになれば幸いです。

カウテレビジョン2018春インターン卒業生たち
高橋康徳(株式会社カウテレビジョン)
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